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 政府は8日、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律案」(改正住宅セーフティネット法)を閣議決定した。高齢者や低額所得者といった住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給促進・居住の安定確保を図るのが目的。

 単身世帯の増加や持ち家率の低下などを背景に今後、高齢者や低額所得者をはじめとした住宅確保要配慮者の賃貸住宅への円滑な入居を求める需要がさらに高まることが予測される。一方で、賃貸人は孤独死や死亡時の残置物処理、家賃滞納等のリスクを懸念している人も多い。そうした状況を踏まえ、住宅確保要配慮者に対して、物件の紹介から入居後の見守り等の入居前後の支援を提供する「居住支援法人」などの協力を得ながら、安心して居住できる環境を整備する。

 法律案は大きく、(1)大家が賃貸住宅を供給しやすく、要配慮者が円滑に入居できる市場環境の整備、(2)居住支援法人等が入居中サポートを行なう賃貸住宅の供給促進、(3)住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化の3点を柱とする。

 (1)では、賃借人の死亡時まで更新がなく死亡時に終了して相続人に賃借権が相続されない「終身建物賃貸借」の利用促進や、居住支援法人による残置物処理の推進、家賃債務保証業者の認定制度創設などを規定。

 (2)については福祉事務所を設置する自治体が「居住安定援助賃貸住宅(居住サポート住宅)」を認定する制度の創設について明文化している。居住サポート住宅とは、居住支援法人等が住宅確保要配慮者のニーズに応じて安否確認や見守り、適切な福祉サービスへのつなぎを行なう住宅のこと。生活保護受給者が入居する場合は住宅扶助費の代理納付を原則とするほか、認定保証業者が家賃債務保証を原則引き受けることが定めている。

 また(3)では、国土交通大臣と厚生労働大臣が共同で基本方針を策定するのに加え、努力義務として市区町村による「居住支援協議会」設置の促進を盛り込んだ。居住支援協議会は、自治体の住宅・福祉の両部局や居住支援法人、不動産関係団体、福祉関係団体等を構成員として想定している。

 同省では、目標を(A)居住サポート住宅の供給戸数を施行後10年間で10万戸、(B)居住支援協議会を設置した市区町村の人口カバー率を施行後10年間で9割と設定した。
 国土交通省は22日、主要都市の高度利用地地価動向をまとめた「地価LOOKレポート」(2023年第4四半期)を公表した。

 調査対象は、東京圏35地区、大阪圏19地区、名古屋圏8地区、地方圏18地区の計80地区(そのうち住宅地23地区、商業地57地区)。

 当期(23年10月1日~24年1月1日)の地価動向は、上昇が79地区(前回78地区)、横ばいが1地区(同2地区)で、下落は前期に引き続きゼロとなった。景気の緩やかな回復に加え、利便性や住環境に優れた地区でのマンション需要の堅調さ、店舗需要の回復が継続したことなどで、5期連続ですべての地区で上昇または横ばいに。住宅地で23地区すべてが7期連続で上昇となった。

 用途別では、住宅地は上昇が23地区(同23地区)。商業地では、上昇が56地区(同55地区)、横ばいが1地区(同2地区)。「上昇(0~3%)」から「上昇(3~6%)」に移行した地区が4地区、「横ばい」から「上昇(0~3%)」に転じた地区が1地区あった。

 圏域別では、東京圏が上昇34地区(同33地区)、横ばい1地区(同2地区)。大阪圏は全19地区、名古屋圏は全8地区の上昇が継続した。地方圏についても全18地区の上昇が継続した。
 国土交通省は13日、「マンションストック長寿命化等モデル事業」の成果報告会を開催。会場(主婦会館プラザエフ(東京都千代田区))とオンラインの併用形式で実施。合計700人が参加した。

 同事業は、高経年マンションの増加・居住者の高齢化に対応してマンションの長寿命化等を実現する先導的なマンション改修・建て替えを実施するプロジェクトを支援するもので、令和2年度から実施。これまでに実施された先導的な取り組み事例10プロジェクトの代表者が説明した。

 冒頭、国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)の下村哲也氏が挨拶。「わが国のマンションストックは700万戸に達し、都市部を中心に主要な居住形態として定着した。一方、高経年マンションの増加・区分所有者の高齢化といった“2つの老い”の進行によって課題が顕在化している。老朽化や管理不全の防止に向けて、日々の適切な修繕工事や機能向上が必要になる」などと述べた。

 その後、10事例の代表者が成果発表。「コンフォール上倉田」(横浜市戸塚区、総戸数516戸)では、全9棟のうちの1~3号棟で水害対策を考慮した長寿命化改修を実施。将来的な気温上昇をも考慮に入れた浸水被害シミュレーションなどの調査や資産評価の実施についても発表した。また、「パーク・エステート上板橋」(東京都板橋区、総戸数298戸)の排水立て管の改修工事について原因把握に向けた調査や合意形成に向けた管理組合の動きなどを紹介した。
 政府は9日、「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定した。

 二地域居住を促進し、地方への人の流れを創出・拡大し、地方部をはじめとした人口減少が進む地域の活性化を図るのが目的。コロナ禍において若者・子育て世帯を中心に二地域居住に対するニーズが高まったことや、関係人口の創出・拡大を進めるためにも、これを促進する必要があると判断した。また、促進するに当たり、「住まい」「なりわい(仕事)」「コミュニティ」に関するハードルがあることから、これらの課題に対して、地域の実情に合わせた環境整備を制度として支援していく。

 法案は、(1)二地域居住(※)促進のための市町村計画制度の創設、(2)二地域居住者に「住まい」「なりわい」「コミュニティ」を提供する活動に取り組む方針の指定制度の創設、(3)二地域居住促進のための協議会制度の創設、等で構成。

 (1)については、都道府県が二地域居住に係る事項を含んだ広域的地域活性化基盤整備計画を作成した際、市町村が「特定居住促進計画」の作成を可能とする旨を規定した。特定居住促進計画は、地域の方針や求める二地域居住者像といった二地域居住に関する基本的な方針や、コミュニティ拠点や就業・利便性向上に資する施設の整備などについて盛り込むもの。なお同計画で定めた事業については、法律上の特例を措置できる。
 (2)では、NPO法人や、不動産会社らの民間企業等を「特定居住支援法人」として指定する権限を市町村長に付与。市町村長は、空き家(不動産情報について本人同意が必要)や仕事、イベント等の情報を、同法人に提供することができる。さらに、同法人は市町村長に対して特定居住促進計画の策定・変更を求めることが可能となる。
 (3)は、特定居住促進計画を策定するための「特定居住促進協議会」を市町村が組織できることを規定。同協議会の構成員は、市町村・都道府県、特定居住支援法人、地域住民、不動産会社、交通事業者、商工会議所等を想定している。

 政府は法改正による効果について、施行5年間で特定居住促進計画の作成を累計600件、特定居住支援法人の指定数累計600法人とした。改正後の効果を5年ごとに見直し、必要な場合は所要の措置を講じていく。